はる動物病院 院長 渡邉 武史
命と向き合い、未来を拓く
略歴
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北里大学獣医学部卒業後、埼玉県内の一次診療動物病院に勤務。その後、北海道大学獣医学部付属動物病院にて臨床研修獣医師として高度医療に従事し、現・麻布大学教授の高木哲先生のもとで獣医師としての在り方を学ぶ。
新潟に戻ってからは地域中核動物病院での勤務を経て、自身の経験を地元に還元する活動を展開。特に動物の歯科疾患に悩む飼い主が多いことに着目し、専門的な歯科治療の必要性を痛感する。
2018年12月、「はる動物病院」を開業。一般診療に加え、県内では数少ない専門的な歯科治療を提供するクリニックとして、新潟市内のみならず県内全域、さらには県外からも患者が訪れる病院へと成長させる。
現在は新潟市獣医師会の役員として地域の獣医療発展に貢献する一方、全国の歯科治療専門獣医師や人間の歯科医師との交流を通じて、再生療法をはじめとする最先端の治療技術を動物医療に応用。動物の歯科治療のレベル向上と、デンタルケアの啓蒙活動にも注力している。
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現在の仕事についた経緯
小さい頃から生き物が好きで、彼らの命を扱う勉強がしたいと考え、獣医学の道に進みました。大学を卒業後、関東の一次診療動物病院勤務をしていた時に職業としての獣医師の仕事と自身のイメージとの相違、父親が病気で亡くなった事、このまま小動物臨床獣医師の道に進むか悩む時期がありました。そんな折、北海道大学獣医学部附属動物病院に臨床研修獣医師として入職しました。毎日朝起きてから日をまたぐまで働き、給料も安い(笑)、今の若い方には考えられないかもしれません。
しかし指導して頂いた教員の先生、共に働いた同期の先生、大学院生や学生さんとの出会いは素晴らしく、自身が小動物臨床獣医師としてやっていこうと気持ちが固まったのは紛れもなくこの時期でした。関わりあえた全ての方に感謝しています。中でも現・麻布大学教授の高木哲先生の動物と飼い主に対して全身全霊で献身的に対処する姿勢に感銘を受け、獣医師としての在り方を学びました。
新潟に戻り勤務医として働く中で、犬や猫の歯科疾患で困っている飼い主さんが多いことを知りました。特に印象的だったのが、歯が折れたワンちゃんが来院されたときのことです。当時の私には適切な対処法が分からなかったのですが、その飼い主さんは東京まで行って治療を受けられたのです。
「歯のことなのに、それほどまでに飼い主さんは真剣に考えているんだ。そして、それを治してあげることがどれだけ意味を持つのか」——この経験が、私の歯科治療への取り組みの原点となりました。一般診療、高度医療という経験に加えて歯科を自分のスペシャリティの一つにできるのではないかと考え、2018年12月に「はる動物病院」を開業しました。専門的な歯科治療を通じて、飼い主さんの悩みに応え、動物たちの健康を守りたい。その想いが、この仕事を選んだ理由です。
仕事へのこだわり
ひとつ目は、「視野を広く持ち、飼い主様と共に歩む獣医療」です。
動物は自分で症状を話すことができません。だからこそ、動物自身の様子を詳細に観察することはもちろん、飼い主さんに症状が発症する経緯から生活環境に至るまでよくヒアリングし、疾患と向き合っています。犬や猫は「痛みを隠す動物」として知られており、飼い主様からの話の中には病気の兆しが隠れていることがよくあります。
また、けがや病気を治すだけでなく、飼い主さんの立場に立って治療方法をご提案するようにしています。完治するまで時間がかかる中で、看護する時間的な問題や自由診療であるが故の費用の問題など、それぞれの飼い主さんに合った適切な選択肢を考慮した上で、どのような治療をするのかを相談しながら進めていくことが大事だと考えています。
ふたつ目は、「学び続け、結果を伴う治療を提供すること」です。
特に動物の歯科治療は、新潟県内でもあまり行われていない分野です。私は全国規模で動物の歯科治療を行っている先生方との交流に加え、ここ1年は人間の歯科医師の先生の実習にも参加することで、動物に活用できる新たな発見が非常に多くあることを感じています。
例えば、再生療法という歯周病で失われた歯を支える骨を再生させる治療があります。この技術はもともとビーグル犬を使った実験で効果が確認された上で人間用に開発されたものです。それを動物医療に応用することで、確かな効果を出せるようになってきました。学ぶことを続け、それを実践し、結果が伴う治療ができること。これこそが私の揺るぎないこだわりです。
今後の展望・私の夢
開業から間もなく7年を迎える現在、当院の歯科治療は新潟市に限らず、長岡市、上越市、さらには福島県や長野県など県外からも多くの方が来院されるようになりました。また、他の動物病院からの紹介で来院される方も増えており、当院の歯科治療が県内全域、県外の方にとっても有益な意味を持っているのだと実感しています。
歯科手術の症例が本当に多く、日々、歯磨きやデンタルケアが不十分である現状を感じています。来院された方には、デンタルケアの大切さや歯磨きのやり方などもご説明させていただき、当院をきっかけにデンタルケアをやるようになったという飼い主さんも多くいらっしゃいます。
私の夢は、歯磨きの重要性を啓蒙していくと共に、県内はもちろん国内の動物歯科のレベルを上げていくことです。そして、一般診療と歯科診療という二つの柱を通して、これまで以上に地域に還元していきたいと考えています。
若者へのメッセージ
若い獣医師の方々、そしてこれから獣医師を目指す方々に、私が開業して7年の中で強く感じていることをお伝えしたいと思います。
まず、「人とのつながりがものすごく重要だ」ということです。新潟に限らず、全国の友人や仲間とのつながりがあり、開業してからの友人もいれば、開業する前の時代からの友人もいます。能力だけでは何も成し遂げられません。目の前で何かを成し遂げるためには、一人では難しいのです。仲間やつながりをつくること——それは年代を限りません。こちらが相手に対して関心を持てば、相手も関心を持ってくれるものです。
次に、「諦めずに継続することの大切さ」です。「継続は力なり」という言葉がありますが、最近は本当にそれを強く思います。続けていることによって、そこから見えてくるものがものすごく大きいのです。すぐに成果が見えないこともあるでしょう。しかし、諦めずに同じことを続けることで、それは必ず人とのつながりにつながっていきますし、未来につながっていきます。
最後に、「自分の病院で全てを対応する必要はない」ということです。私も、自分が対応できない特別な手術や治療は、適切に紹介するようにしています。それが、より飼い主さんにとっての最善につながるのです。
何かを学び、それを実践し、結果が伴う——それがほとんどの仕事です。学ぶことを続け、人とつながり続け、諦めずに継続すること。それが、皆さんの未来をきっと豊かなものにしてくれるはずです。
はる動物病院
(http://haru-animalhospital.com/)