用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック 院長 菊池 真大
緩衝地帯に根を張るマングローブとして
略歴
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慶應義塾大学医学部卒業後、消化器内科医として米ペンシルバニア大学での研究と、大学病
院および地域医療の臨床現場でキャリアを積む。専門は肝臓疾患と内視鏡診療。
医療現場において、高度専門医療を追求する大学病院と、最新設備を持ちながらも十分なフ
ォローが行き届かない健診センター、そして生活習慣病の管理にとどまる内科クリニックと
いう”医療の二極化”に強い問題意識を抱く。
この医療の狭間に広がる「緩衝地帯」にこそ、患者が本当に必要とする医療があると確信し
、健診で拾い上げるべき症例を確実にフォローし、必要な患者を大病院へ適切につなぐ”橋
渡し役”としてのクリニックを構想。
用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニックを開業し、生活習慣病の管理にとどまらず、健診
と専門医療の間に立つ新しい診療モデルを実践。地域の健康を支える「マングローブのよう
なクリニック」として、誰も積極的に手を伸ばしたがらない境界領域にしっかりと根を張り
続けている。
現在は、医療DXの推進にも積極的に取り組み、2024年12月からUSEN-ALMEX社のクリニ
ックロボットを用いた実装実験を開始。より普遍的で安定した医療を届けるための先進的な
取り組みを続けている。
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現在の仕事についた経緯
私がクリニックを立ち上げた背景には、現在の医療が抱える”二極化”への強い問題意識があります。大学病院は先進医療や高度機器を駆使して専門性を追求する一方で、健診センターは最新設備を導入しながらも受診者数の確保に追われ、十分なフォローが行き届かない状況が続いています。その狭間で、内科クリニックは生活習慣病の管理に専念するだけの存在になりつつあり、新しい挑戦の機会も乏しく、現場の気力さえ失われかけていると感じていました。
だからこそ、私はこの”間”を埋める存在になりたいと考えました。健診で拾い上げるべき症例を確実にフォローし、必要な患者さんを大病院へ適切につなぐ。その両者の間に広がるバッファーゾーン(緩衝地帯)に、しっかりと根を張るマングローブのようなクリニックをつくりたい——その思いが、起業の原動力となりました。
現在は、生活習慣病の管理にとどまらず、健診と専門医療の”橋渡し役”としての機能を高め、地域の健康を支える新しい診療モデルを模索し続けています。大学病院でも健診センターでも拾いきれない領域に光を当て、患者さんが迷わず適切な医療につながるルートを整えること。それが、私の現在の仕事であり、これまでのキャリアの延長線上にある使命だと考えています。
仕事へのこだわり
私のこだわりは2つあります。
ひとつ目は、「大切な人の人生を少しでも長く、健やかに支えたい」という原点を忘れないことです。小学校5年生のとき、祖父を亡くしました。私の家には医療関係者が一人もおらず、身近な人の死に向き合ったのはその時が初めてでした。多感な年頃に経験したその出来事は、「もっと長生きしてほしかった」という強烈な思いとして心に刻まれました。その感情はやがて、家族や大切な人の人生を少しでも長く、健やかに支えたいという願いへと変わり、医師を志す原動力になりました。この体験こそが、私のキャリアの出発点であり、今も変わらず仕事へのこだわりや価値観を支える大切な源になっています。
ふたつ目は、「誰も積極的に手を伸ばしたがらない境界領域にこそ、社会を支える大切な役割がある」という信念です。卒業25周年記念式典に出席した際、母校・慶應義塾大学の伊藤公平塾長が語られた言葉が、今も深く心に残っています。塾長はマングローブの環境破壊に触れながら、「マングローブが育つバッファーゾーン(緩衝地帯)こそが、環境問題や国際的な対立において最も重要な場所である」と話されました。その言葉を聞いたとき、自分たちの専門領域だけに閉じこもるのではなく、誰も積極的に手を伸ばしたがらない”境界”の領域にこそ、社会を支える大切な役割があるのだと強く感じました。地域医療の中で、大学病院と健診センターの狭間に広がる「緩衝地帯」に立ち、必要な人に手を差し伸べ、確かな根を張り続ける存在でありたい。その自覚こそが私の揺るぎないこだわりです。
今後の展望・私の夢
より良い医療を届けるための取り組みとして、昨年12月からUSEN-ALMEX社のクリニックロボットを用いた実装実験を始めました。医師・看護師・事務それぞれの業務は幅が広く、本来の専門性とは別の”境界領域”の仕事が多く発生します。まさにマングローブが根を張る緩衝地帯のように、誰が担うべきか曖昧な業務が積み重なり、現場の負担になっているのが現状です。
もしその部分をロボットが担えるようになれば、スタッフは自分たちの専門領域に集中でき、医療の質はさらに高まります。将来的にAIが搭載され、私たちの診療スタイルや価値観をロボットに共有できるようになれば、たとえ医師の心が揺れる場面があっても、診療の軸がぶれることなく、より普遍的で安定した医療を提供できるようになるはずです。
地域の”マングローブの中枢”として、緩衝地帯にしっかり根を張りながら普遍的な医療を届け続けるためにも、医療DXの推進は欠かせないと考えています。これは単なる効率化ではなく、医療の本質を守りながら未来へつなぐための重要な一歩だと思っています。

若者へのメッセージ
次世代の医療従事者の皆さんに伝えたいことは、「DXを活用することで、医療はさらに進化する」ということです。
DXを活用することで、これまで人の手が届きにくかった領域にも手を伸ばせるようになり、一方で人間性が求められる専門領域には、これまで以上に深く目を向けられるようになります。次世代の診療スタイルは、医師の働き方そのものを変え、医療をより進化させる可能性を秘めています。また患者さん自身が自分の健康指標を設定し、自らの体を主体的に管理する時代もすぐそこまで来ています。
医療業界は、固定観念に縛られやすく、他業界と比べると医療DXの歩みが遅れているのも事実です。患者さんのプライバシーや医療安全を守るために慎重な姿勢が必要なのは当然ですが、人間らしい医療の普遍性を未来へつなぐためにも、若い世代の柔軟な思考を大切にしながら、DXを前向きに推進していくべきだと感じます。
福澤諭吉は「進まざるは必ず退き、退かざる者は必ず進む」と語りました。この言葉を胸に、次世代の皆さんと共に、医療の未来を切り拓いていきたいと思います。
用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック
院長 菊池真大
慶應義塾大学医学部卒業
東海大学医学部客員准教授
米国ペンシルバニア大学消化器内科元博士研究員
日本アルコールアディクション医学会理事
日本総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本内視鏡学会専門医、日本人間ドック健診専門医、日本病態栄養学会専門医、日本抗加齢医学会専門医
2024年秋、メタボとロコモを同時予防管理する未来志向型クリニックを東京・用賀の地に開業。クリニックロボットを内科クリニックとして初導入した。
(https://www.youga-naika.com/)