医療法人社団光翔会 しべつ眼科 理事長・院長 下内 昭人

三方よし

医療法人社団光翔会 しべつ眼科
理事長・院長 下内 昭人


略歴
_________________________

旭川医科大学 医学部医学科卒業。その後、道内の中核病院で勤務。2016年に博士号を取得し、留萌市立病院 眼科医長に赴任。同年、日本眼科学会学術展示優秀賞受賞。日本眼科学会認定専門医取得。2017年から旭川医科大学眼科学講座の診療助教として、糖尿病網膜症と網膜静脈閉塞症の専門外来を担当。その傍ら、出張医として道内各地の関連病院で地域医療に携わる。2019年、国際眼炎症ワークショップ(GOIW)で眼科医向け教育セミナー指名講演。2020年、旭川医科大学眼科同門会長賞受賞。2022年6月、北海道士別市にしべつ眼科を開院。2023年10月、医療法人社団光翔会設立。
_________________________

現在の仕事についた経緯

 父は公務員でしたので、自分もなんとなく公務員になるのかなと考えていたのですが、そんな中で私が医師を目指すようになったのは、子供の頃、病弱な母を看病していた経験がきっかけです。病気で辛い思いをしている人も、その人を支える人も、一緒に助けてあげられる医師になりたいと思うようになりました。次に眼科医を選んだ理由ですが、今は人生100年の時代となり、長く生きるだけでなく、どれだけ質の良い、いわゆる高いQOLの人生を送るかが重要です。視覚は外界から得られる情報の約80%を占めると言われています。目が見えなくなると自分の生活に支障が出るだけでなく、それをサポートする介護の手が必要となり、周囲の人の負担も大きくなる。また、うつや認知症にも影響があると言われており、全身の健康にも支障が出てくる。そうした中で、患者さんの光を取り戻し、一人でも多くの方の「見える喜びを叶える手助けをしたい」、そして患者さんを支える人の負担も減らしてあげたいという強い思いから、眼科医になりました。

仕事へのこだわり

 決まったことを行うのがマニュアル、言われたことをするのがサービス、言われる前に察して行動するのがホスピタリティー。このホスピタリティーの精神が大事だと考えていて、私自身はもちろんのこと、スタッフにも常日頃意識するよう伝えています。患者さんやその家族がしてほしいことは何なのか、相手の立場に立って考えないとできないことであり、理念にある「患者さん第一」という部分の根幹です。より添った診療には欠かせない考えだと思っています。

 こうした考えに至ったものには私の座右の銘である「三方よし」が関係しています。「三方よし」は近江商人の経営哲学のひとつとしてよく知られている言葉ですが、私にとっての三方の一つは「自分、スタッフ、患者さん」です。患者さんの満足度はスタッフの満足度に比例すると思っており、できるだけ働きやすい環境を作れるように意識しています。もう一つの三方は「自分、患者さん、患者さんの家族」でもあります。患者さんを喜ばせるだけでなく、その患者さんの家族にもより添えるような医師になりたいと考えており、光が見える程度だった患者さんが手術で鮮明に見えるようになり、死ぬ前に孫の顔が見られて嬉しいと喜んでいた患者さんとともに、そのご家族も笑顔になっている姿を見て、医師になって良かったなと実感しています。見えなくなってしまった患者さんが大変辛いのはもちろんですが、その家族も介護の負担が大きくのしかかってきます。そうした周りの方も一緒に幸せにできたら素晴らしいなと思いながら、日々の診療をしています。 

今後の展望・私の夢

 2017年に旭川医大に戻ってきてからは、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性、網膜剥離といった網膜硝子体疾患を担当し、難症例の白内障も含めて、全道各地からご紹介いただく患者さんの診療にあたってきました。北海道は地域での医療格差が大きく、約250km離れたところから来院されている方もいました。まだまだ医療過疎が根強く残る地域医療の問題を目の当たりにし、特に道北方面はその影響を受けているように感じました。なぜなら旭川以北で硝子体手術を行っている医院は一つもなかったのです。また、士別は常勤医(かかりつけ医)すらおらず、高齢になると必ず発症する白内障に対する手術を受けるために、多くの患者さんが旭川や名寄へ通わなければならず、非常に不便を感じていらっしゃることを痛感しました。そこで私は、士別というこの地で、【治療を地域で完結させる患者さん第一のホームドクター】という理念のもと地域医療に貢献したい、という気持ちを強く持つようになり、2022年6月にしべつ眼科を開院しました。これからの時代は「早期発見・早期治療」はもちろんのこと、「予防医療」が重要です。無症状でも40歳以上は眼科での眼底検査が推奨されていますが、まだまだ認知されていないのが現状です。眼科での定期検査の重要性を啓蒙しつつ、地域医療に末永く貢献できるように、精進していきたいと考えています。

若者へのメッセージ

 「鉄は熱いうちに打て」とよく言いますが、まさしくその通りだと思います。そして、その上で重要なのは「何事も楽しむ気持ち」だと思います。私が研修医の時は、熱い気持ちを大切にして、率先して自ら経験を積めるように動いていました。社会に出ると色々大変なことや辛いこともあると思いますが、自分の将来像を常に頭に浮かべて、それに必要なことや経験はどんなことなのかを考え、楽しみながら乗り越えていくことで、今の自分よりも必ず成長した自分に出会えると信じて過ごすことが大切だと思います。

 そしてもう一つ伝えたいこととしては、「何を選ぶか」ではなく、「選んだ道をどう進むか」が大事だと思っています。成功する人はどんな道を選んだとしても、その判断力と実行力で成功を収める方が多いように感じます。選択することに時間をかけるよりも、選んだ先に何があるか、自分はどうしたいのか、そのビジョンをはっきりとさせ、自分が選んだ道を突き進んでいくことが大事なことだと思いますし、それで失敗すればまた次に繋げることができます。そうしてPDCAサイクルを回していくことが一番の成功への近道なのだと思います。 


医療法人社団光翔会 しべつ眼科
https://shibetsu-ganka.com/