川崎まりほ

一生Surfing、一生Coffee

神奈川県茅ヶ崎市。湘南エリアの中心に位置し、南側には海、北側には山と、自然豊かなこの街。都市機能も充実しており、そのバランスの良さから生まれる独特な心地よさ、移住者が増加している。そんな茅ヶ崎にあるコーヒーショップ「Neighbours Coffee」でバリスタとして働く川﨑万里帆氏さんも、この地に魅了された移住者の一人だ。

コーヒー、そしてサーフィンとの出会い。

ーー私のカフェ人生の始まりは高校卒業後、アパレル業界で働き始めたとき、よく通っていた神戸の「シェブロンカフェ」の方から、ホールのスタッフとして誘ってもらったことです。カフェは家族経営で、忙しいけど、楽しい、常連も多く、アットホームな雰囲気でした。お客様との距離も近く、コミュニケーションが深く取れる接客がとても好きでした。

 バリスタになろうと決めたのは27歳で、離婚をして、一人になって、その後の人生設計を真剣に考えていました。結婚生活の反動もあって、「どうせなら好きなことをして、後悔のない1日を生き続けたい」と決めました。「手に職つけなあかん」と思っていましたが、その頃ちょうど、サードウェーブコーヒー(※​​第三のコーヒーの流行。シングルオリジンコーヒーの使用や浅煎りの豊かな酸味などが特徴)が、日本でも認知されてきた頃でした。バリスタという職業も徐々に知名度が上がってきて、「バリスタを学ぼう!」と決心しました。

 ーーコーヒーを真剣に学ぼうと思い、とにかく神戸のカフェはほとんど回りました。その時に出会った「GRANKNOT coffee」というお店のラテに感動したんです。今まで飲んだラテの中で一番おいしかった。個人経営のお店でしたが、「働かせてください」と頼み込み、修行のような形で神戸からお店に通って、働きながらコーヒーについて深く学びました。

ーーその後、知り合いに誘ってもらい、北浜の店舗「SCHOOL BUS COFFEE STOP」で働き始めました。そのお店はSNSなどでも徐々に人気が出てきて、お店の経営自体、とても順調でした。ただ、都会での生活に少し心が疲れてきていたんですね。仕事はとても充実していましたが、毎日ビルに囲まれて、満員電車で、大好きなサーフィンをする時間も取れなかった。いろいろな感情とタイミングが重なって、場所を変えよう!と決心しました。そこから「どこに住もうかな」と、いろいろな場所や地域を調べ始め、最終的に湘南に決めました。いくつか理由がありましたが、大きな理由の一つが海の近くで大好きなサーフィンができたからということがあります。

ーー元々おばあちゃんの家が海の目の前で、学生時代もセーリングをやっていて、ずっと海と関わっていましたが、初めてサーフィンをやったのは20代後半でした。サーフィンをやっていた友人に誘ってもらったのですが、その日は、初心者は入ってはいけないくらい波が大きくて、当然波には乗れず、悔しくて、どうしてもあの波に乗りたい!と、思ったことから私のサーフィンは始まりました。関西から場所を移す際も、「サーフィンができる場所」が一番の理由でした。でも、サーフィンができる場所は田舎が多くて、やっぱりコーヒーの仕事をするには、ある程度人が多くて、集客が見込める場所ということで、湘南がいいなと思ったんです。

小さな波から始まる、幸せの連鎖

ーー最初湘南に引っ越した時、知人も友人も、誰もいませんでした。そこで、自分のコーヒーブランドである「Little WAVE coffee」を、名刺代わりにサーフポイントで無償で配ったり、夕方に駐車場でコーヒーをいれて飲んでもらったり、徐々にその土地で活動を広めていきました。そうしているうち、前の職場の知人から、今働いている「Neighbors Coffee」のオーナーを紹介してもらったんです。

初めて会ってから2時間で、「一緒にやろうよ」といわれ、「Shop in Shop」でお店の中で自分のコーヒーブランドも販売させてもらうようになりました。お店にきてくれる方も徐々に増え、お店を中心にお客様同士のコミュニティーも広がっています。湘南に移住して、本当に人が温かいと感じました。心に余裕があって、譲り合う精神を自然に持っている人たちが多いと思います。Neighbors Coffeeは、そんな人たちが気軽に集まれる場所にしたくて、実は価格設定もかなり安くしています。都内なら800円以上するスペシャルティコーヒーを450円で出し、子供たちも来やすいようにキッズ価格も用意しています。

私は人と関わることが本当に大好きで、人と人をつなげることが大好きなんです。自分のブランド「Little WAVE coffee」の名前も、小さな波がいずれ大きな波になるように、一杯のコーヒーで幸せを感じてもらい、それがいろいろな人につながっていく、そんな意味が込められています。今でも私がバリスタとして初めていれたラテを飲んでくれたお客様が、記念日に連絡をしてきてくれたりもします。技術を突き詰めたバリスタというよりも、ポスピタリティーというか、私に会いにきてくれて、コーヒーを飲んで元気になってもらえる、そんなバリスタでいたいと思います。

人見知りは全くしないし、嫌われることも気にしないメンタルです。コテコテの関西弁も相まって「面白いね!」と思ってもらえているみたいですね。おじいちゃん、おばあちゃんとすぐ仲良くなれますし、交番のおっちゃんにもたまに差し入れにいったりして、「なんかあったら助けてもらお」の精神でやっています。カフェのバリスタというよりは、「タバコ屋のおばちゃん」のような存在と思われているのかも知れません。悩んでいる人は一回会いにきてほしい。こっちに住んでから、仕事に悩んでいる人の相談を受けて、既に3人くらい仕事を辞めさせています(笑)。私に会うと、元気になりますよ!

川崎万里帆の、根ざし方

ーー私はこれからの生き方として「好きなことしかやらない」と決めています。大好きなサーフィン、コーヒーに身を置きながら、自分にできることで、関わる多くの人に幸せを与えられるような存在でい続けたい、と思っています。これまでは朝日を見ながらおいしいコーヒーを飲むことが幸せでした。今では仕事前に早起きして、朝日を見ながら大好きなサーフィンをし、その後においしいコーヒーを飲んで、お客様と関わることができています。本当に幸せです。一日一生、毎日を全力で生き、後悔をしたくありません。

 将来的には、オーストラリアのバイロン・ベイ(Byron Bay)に住んで、コーヒー屋さんをやりたいと思っています。バイロン・ベイは、コーヒーカルチャー、サーフカルチャーが根付いており、初めて訪れた際に、「ここであれば私の夢が全てかなう」と思ったんです。今では夢ではなく、具体的な目標です。

どんな場所であっても、1日の中で誰か一人、自分から幸せを感じてもらえるような存在になりたいと思っています。

Photos by:kaka_teru
https://www.instagram.com/kaka_teru/?hl=ja

プロフィル

川﨑万里帆、1985年生まれ、兵庫県神戸市出身

サーフィンをしながら大好きな海の前でコーヒー屋さんをするという目標をかなえるため、自分のコーヒーブランド『Little WAVE coffee』を掲げ湘南に移住。

①Instagram : marihooo22
②Instagram : littlewavecoffee
③Instagram : neighbors_shonan